2018年4月22日日曜日

リズと青い鳥

リスト青い鳥見てきた

ネタバレ有り

この映画はみぞれと希美のすれ違いの物語です
映画のギミックとしては架空の童話「リズと青い鳥」という物語を二人の関係に照らし合わせて二人が今どういう関係であるかを示しています

でももちろん映画なのできちんと仕掛けがあります
まず童話「リズと青い鳥」のおおまかなあらすじを書きます

一軒家で一人で住んでいる少女リズは動物たちと楽しく暮らしています
そこで見かけた一羽の青い鳥に魅せられます
そしてある嵐の夜のあとに助けた青い髪の少女と楽しく暮らし始めます(ほぼ明示はされてませんが安易に青髪の少女が青い鳥であることがわかります)
でも楽しかった日々は終わりを告げてリズは青い鳥を解放し離ればなれに暮らすことにしました という話です

さて本編の話です
序盤はどちらかと言うとリズ=みぞれで青い鳥=希美のような形で描かれます
どちらかと言うと一人になりがちなみぞれに一緒にいる楽しさを希美がもたらしてくれているというように描かれています
のぞみが一年生に誘われても希美とだけ居たいという描写もあって青い鳥に魅せられたリズとリンクしています
ただみぞれは孤独を演出される代わりに希美は部員たちと和気藹々と楽しむ姿も描写されています
なので後々への伏線として完全にリズ=みぞれで青い鳥=希美とは描かれていません
ここは見る人がどちらと見てもいいようにあいまいにされています
この辺が導入部で童話の二人の出会いと楽しい生活にリンクするようになっています

続いてこの二人は本当に仲良しなのか?という形で話が展開します
みぞれははっきりと言葉に出来ないし希美はみぞれと二人だけでいることをあまり好みません 分け隔て無くみんなと仲良くしています
そこに希美の楽器フルートとみぞれのオーボエの掛け合いのソロパートの練習が入りますがうまくいきません
フルートが強く孤独なオーボエはフルートに答えられません
そしてみぞれが提出した未記入の進路希望票と新山先生がみぞれを音大に誘うという形で二人の仲が崩れていくように見えます

ここはリズと青い鳥の楽しい生活から別れへとリンクする所です
でもみぞれはもちろん希美も現状が壊れることを嫌って今の楽しい生活が続けば良いのにと思っています
みぞれはそれまで水槽のフグにエサをあげる描写があったりして現状維持を求めています

でもこの頃から二人のすれ違いが大きくなり始めます
みぞれは下級生とも仲良くなり始めて音大に誘われたのがみぞれだけだと思って現状維持が出来ないことに不安を覚えてきます
みぞれが好きなのは自分だけだというアイデンティティが崩れてきます
言葉ではみぞれを祝福したりしながらも本当は嫉妬も湧き始めてきます
その結果希美は自身も音大を目指すと言い始めます

みぞれは言葉足らずではありますが下級生たちと仲良くしたりして変わり始めます
しかしフルートとの掛け合いが上手くいかないことに不安を覚えます
また下級生たちがやっていたハグ遊びを希美に拒否されたことに寂しさを覚えます

そんな時に高坂と黄前のトランペットとユーフォニアムが遊びでフルートとオーボエの掛け合いをやっているシーンは入ります

あの二人はあんなに簡単に掛け合いが出来るのにどうして自分たちは出来ないんだろう?みぞれと希美は仲が良いはずなのに掛け合いが出来ないはずはないのに

ここで新山先生にオーボエの掛け合いの時の気持ちを相談されてみぞれはやっと気がつきます
現状維持では二人とも幸せになれないと

ここはちょっとこの映画の寂しいすれ違いのところです
みぞれと希美が助け合って演奏を完成させたんじゃ無く新山先生や周りの環境からオーボエの演奏を見直すことにしたからです

練習会でみぞれが提案したフルートとの掛け合いはオーボエが圧倒するような素晴らしい演奏を見せてやっと演奏が完成します
でも素晴らしい演奏になったにもかかわらず希美は涙します

リズはみぞれのように描かれていましたがリズは希美でもあったのです
ずっとリズが青い鳥をかわいがっていてずっと離したくない存在だったと気がつきます

ただここの演奏シーンは決別のシーンとリンクさせるところですが言葉では無く演奏で表現しています
オーボエ奏者として独り立ちをする決意を見せた「強さ」とも取れるし今までの楽しさを盛り上げてサヨナラを告げられる演奏「決別」であったとも取れます
ここは見る人によって捉え方が異なる仕掛けを作っています

そしてその後にもう一度ハグを求めるみぞれにのぞみは応じます
絵としては仲直りのようにも取れますが「ずっと一緒にいたい」と強く抱きしめるみぞれに対してあまり強くは抱きしめられない希美
そしてかけた言葉は「みぞれのオーボエが好きだよ」
二人のすれ違いはずっと続いたままです
希美は腕時計を握ってまだ現状維持への未練を表現してもいます

でもこのことがあってからリズは青い鳥を解放します
希美は音大進学を諦めてみぞれは音大進学に向けて練習に励みます

でもすれ違ったままでも二人がお互いを嫌いになったわけではありません
道は分かれても二人は一緒に歩き最後に一瞬だけ一緒になります
この先の二人のことはわかりませんが「物語はハッピーエンドがいい」のです