悪童日記見てきた
大筋では原作通りに双子が未熟な子供から自立して大人になっていく話
もう原作の小説を読んだのは20年くらい前の話だからうろおぼえだけどね
だけど原作の時からもそうだったけど問題となっているのは双子たちの行動が残忍であることです
でもその行動原理についてもこの映画ではしっかり描いていました
父母から離されて自活することを強制される訳ですから
魔女がきちんと教育しています 働かない者には食べさせるものが無いと
そして学んだ双子は自らを強くし、誰かの庇護下にいるのでは無くパートナーとして信頼される人間になっていくわけです
その戦時中に聖書の言葉や法律がどれほどむなしく響くかはきっとここに描かれているとおりなんでしょうね
それを決定づけるのは劇中に母親からの手紙を焼くシーンと豚にエサを与えるシーンが交互に挿入されているところでしょう
これは従属からの脱却を表しているのだと思います
そんな双子にとっての父に近い存在はドイツ軍の将校でしょう
しかし将校は双子のことを子供ではなく友達と呼びました
自分の隣にいる参謀を差し置いて自らを鍛える双子を友達だと
そこには参謀が「美少年だから」っていうもしかしたゲイだから愛されているのかもという伏線もありますが、どちらかというと真に強い男、誰にも従うことのない自立した男としてあえて子供ではなく友達だと言ったのでしょう
それに比べると実際の父親は弱い
軍隊に徴兵されたにせよ自分の子供たちを守ることが出来ずに妻も別の男に奪われてしまう
そして戦争から逃げ出した弱々しい姿で強くなった双子の前に現れる
これは僕は父親の責任ではないと思うけど戦争がそうしたとはいえつらい姿だった
父親だって子供たちに愛情がなかったわけじゃない 届ける手段も無かったし守る手段も無かったのだから
これに限らず残忍な内容にも関わらずこの作品には愛情があふれている
母が魔女に送っていた服や手紙を処分していたこと
これは本当の愛情が双子に届いていなかったことともう一つ
魔女が自らの子供である母に愛されていないことの裏返しでもある
これは嫉妬で自分へは今まで連絡もなかったのにどうして自分の子供にだけ愛情を注げるのが悔しいのです
それに鍛えるためと称して断食を行う双子に鶏肉を焼いてくれます
ここはパンフレットでは子供たちを差し置いて食べる描写とされていますがむしろ何か不満があって食べない双子に対して良い食事を与えようとしたんでしょう
それにもうその時には最初に来た頃の無能な子供では無く仕事のパートーナーになりかかっていて魔女にも不可欠な存在だったんだから
母親だって一人でいれば誰か頼る人を欲しくなったりもするでしょう
別の父親の子供を抱いて現れれば複雑な感情をもったりもするだろうけど不安な世界で本当にそれを攻めることなど出来るだろうか
暖かい服を与えてもらえない子供に同情してタダで靴をくれる親切な靴屋さんもいる
本当に無情なだけの世界では無い
もちろんその靴屋がユダヤ人だと告発した司祭のところで働く娘にしても泥だらけの双子に愛情を注いでくれる
その双子の容姿に興味があったりショタの気があるにせよ愛情には違いがない
それに当時のヨーロッパではナチスは歓迎される風潮すらあったんだからそれを元に結果論で彼女を悪くも言えないだろう
彼女はユダヤ人を差別していたけどそれは良いことでは無いけれども同調差別を元に絶対に悪だと言い切ることは出来ない
双子にしても靴屋が殺されるという個人的な恨みが無ければ彼女に仕返しなんてしないだろう
そして警察に捕らえられた双子を助け出す将校も自らの友人を助けに来ただけのこと
さすがに射殺するのはどうかと思うけど警察権力に従属する男は彼にとっての友達ではないからだ
それにソビエトの兵士たちにレイプされて死んでいった少女を双子のやり方で見送り魔女の死まで見届ける
ただ最後の国境越えに関しては少し残忍すぎたかもしれない
誰かが通ったあとの地雷原は爆発しないという前提があったにせよそれを無力な父にやらせるのはさすがに厳しい
父にも脱出という共通の目的があったにせよ文字通り踏み台にしか使っていないんだから
厳しい状況下で国境越えには犠牲が必要だったのかもしれないが父は無責任ではあったかもしれないが裏切りはなかったんだから
でもそういう一線を越えてまで双子は別れて強くならなければならないという強い意志を表したかったのかもしれない
昔原作を読んだときにはどちらかというと双子に自分を重ね合わせて自分ももっと強い人間にならなければと一人称的に読んでいたけれど、今回の映画では年を取ったせいかうまくいかない周りの人たちにも少し感情移入出来た
でもやっぱりこの映画や原作は高校生くらいのこれから自分を決める人たちに見たり読んだりしてもらいたい映画だね
星五つでもいいけど万人受けする映画でもないので星四つで
★★★★
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